second,ジョーカー
6月22日 01:21
:イノセント・ローズ(潔白)
イノセント・ローズの原型(前ブログより)
話題:オリジナル
(※前ブログから移動)
高価な大理石の床に響く足音にすれ違う人々は慌てて頭を下げる。
足音の主たる少女はちらりとそれらを一瞥して通り抜ける。
歩く度にふわり、ふわりと揺れるドレスは素人目にも高価だと分かる程見事な紅色と漆黒の布で作られており、特に胸元を飾る漆黒のバラ。
それは凛とした彼女の態度、顔立ちによく映えていた。
だが、身分だけは上の筈の彼女を取り巻くのは不自然と言っても過言ではない好奇と軽蔑、そして深い憎悪の視線。
それを素知らぬフリをして歩き続ける彼女だったが、背後から自身を呼び止めた男の声に忌々しげに顔をしかめた。
「おやおやこれは・・・そのように急いで何処へ行くので?・・・・・・荊姫?」
柔和な笑みが貼り付けられた男の顔を肩越しに睨み付けゆっくりと、だが強い言葉で制した。
「・・・・・・主たるこの私を字名で呼ぶと言うのは、無礼なのではなくて?」
男の柔和な笑みが歪む。
そこで彼女はさらに、追い打ちをかけるように言葉を紡いで行く。
「先日捕まえたと言っていたレジスタンスの男の様子を見てきます。貴方なら彼が何処にいるのか知っているのではなくて?・・・生憎、私は紛い物の牢獄の場所しか知らないの」
「なりませんよ、姫様。尊い姫様をあのような場所へ・・・・・・それに、もし姫様が彼を見たら、激怒のあまり彼を『喰べ』てしまうかもしれない」
男はそういうとクツクツと喉を鳴らすように笑う。
その顔からはすでに柔和な笑みの仮面は剥がれ、ただただ彼女を軽蔑的に見つめるだけであった。
(不快ね。新しく大臣になった男だと言っていたからどんな『種』の持ち主かと思えば・・・『荊』は当然、『向日葵』にすら遠く及ばない。しかもコイツは・・・・・・)
「口を慎めよ、『仇花』」
「何を・・・っヒ!?」
シュルリと彼女のドレスの袖から伸びたのは青々とした荊。
それはあっと言う間に男に絡み付きギチギチと締め上げる。
「ぐっ・・・カハッ!!?」
「そんなに、私に『喰べ』られたいの?・・・良いわよ。それじゃあ存分に私の苗床になってね。貴方のお陰で、私はもっと美しい花を、咲かせられるわ」
「い¨・・・あ¨ぁあ¨ぁぁぁあぁ!!!!!お・・・ゆる、しを・・・・・・ひめぎみィ!!」
荊の刺が男の皮膚を破る音、強く締め付けられる骨がボキリと嫌な音を立てる。
だが、みるみる悲惨な姿へ変貌していく男の体からは一滴も血は流れない。
心臓の拍動の様に荊が脈打ち、同時にズギュリと何かを吸い上げるような音。
その度にくぐもった呻き声を上げ干からびたようになっていく男・・・それは、まるで・・・・・・
「喰ってる・・・」
周囲の者達の中で、一体誰がそう呟いたのか。
ペロリと舌舐めずりをした彼女はスッと目を細め、もはや原型を留めない男にニッコリと微笑みかけた。
「ごめんなさね。牢獄の場所は知っているの。この前喰べた者が、命請いしてベラベラ喋ってくれたお陰でね」
でも、嗚呼・・・・・・
「もう聞こえないわね」
シュルシュルと絡み付いていた荊がほどかれ支えを失った男の骸が大理石の床に落ちる。
ガコン、頭蓋の音が、高く響いた。
「誰だ?」
薄暗い、石造りの牢獄で聞こえた足音に少年は低い声でそう尋ねた。
「あら、起きていたのね」
「・・・!貴様、は・・・・・・!!」
「私は、アリス。この国の姫」
高価な紅と黒のドレスが揺れる。
少女、アリスがそう名乗ると少年はその瞳に強い憎しみをたたえさせアリスの細い首に掴みかかった。
「っ・・・!」
「お前、が・・・お前が荊姫!?・・・・・・残虐な独裁者にして、悪食の化け物・・・!!」
「ぅ・・・あっ・・・・・・!」
アリスと少年の間の薄い格子状のそれはさしたる問題ではなく、ギリギリと強さを増す締め付けにアリスは朦朧とする意識の中、必死で言葉を紡いだ。
「・・・っごめ、んなさい・・・・・・こ、の国、変えられ・・・なかっ・・・!どうか・・・・・・わたし、を、・・・殺して」
「何を・・・!!」
陶器のように白く滑らかな頬を伝う涙にが、少年の手に堕ちた。
+あとがき+
いやぁ……
エブリスタの連載の方ではもうすでにこのシーンは終わってるんですが……
改めて読み返すとわけわかめだな、って(笑)
でもここから今の「イノセント・ローズ」(以下、「潔白」)がある訳なんですよね〜
これから25日までは雑記に混ざって前ブログでのネタだのなんだのを移動させますね!!
あとは、もうちょい交流が欲しい、な……
こう、新天地に来ると今まで暖かくてありがたい環境にいたんだな、と思います(^^;
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