黒い都市伝説G
2010.9.30.Thu 21:00



私は関東の私鉄に乗って通勤していました。
その日は珍しくシートに座れたのでウトウト眠ってしまったようです。
目覚めると、車窓から見知らぬ田園風景が広がっているのが見えました。
とまどいながらも私は、知らないうちに支線ができたのかな(遠回りしてるのかな)と、あまり深く考えずに乗り続けました。
のどかな風景に心和ませていると、隣に座っていた老夫婦の会話が耳に入ってきました。
「おまえにもずいぶん苦労かけたな」
「いえいえ、気にしないで…お父さん」

相変わらず、車窓からは田園風景が広がっているのが見えます。
まるで地方のローカル線のようです。
のどかな風景に心和ませていると、向かいのシートに座っている女子高生たちの賑やかな会話が耳に入ってきました。
「もう少し楽しみたかったよね」
「うん、残念だよね…」

電車は今まで見たこともない、旧字体の漢字が7、8文字あるような難しい名前の駅に停車しながら走行。
やがて、車窓から見える田園風景は暮れなずみ、車内は夕日に照らされてゆきました。
さすがにこれはおかしいと思った私は車掌に詰め寄り、会社に近いM駅にはいったいいつ着くのか尋ねました。
車掌はおや?という顔をして、切符を持っているか尋ね返してきました。
私はポケットや鞄の中を探しましたが、切符はどうしても見つかりません。
車掌は顔色を変え、声を荒げました。
「お客さん、切符ないと乗れないよ!この電車は貸し切りなんだ!早く降りてくれ!」
あれよあれよと私は走行中の電車から放り出され、奈落の底へ落ちてゆきました。

「や?ここは?」
病院で鼻や器官に何本も管を差し込まれた状態で私は意識を取り戻しました。
私が乗った列車は出発からまもなく脱線事故を起こし、多数の死傷者を出していたことを知らされたのは容態が落ち着いてからです。
ああ、あの電車はあの世行きだったのか…。

今から10年程前、実際に起きた大きな鉄道事故から助かった人が語った話です。

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